自然再生の目標
自然再生の目標を以下のように設定します。
目標1:水質改善 -汚濁負荷と自然浄化のバランスを整える-
土を耕し、食料をつくり、衣服を作り生活を営む。食料を食べ、排泄し、生物が成長し死んでいく。これらの活動は自然の恩恵を受けるとともに、自然に対し「汚れ」を排出してきました。自然は、その「汚れ」を「サイクル(循環)」に取り入れることによりバランスを保ってきました。
しかし戦後の高度成長時代以降、人間の活動から排出される「汚れ」は自然のサイクルの受け入れ能力を超えて、環境に蓄積されて来ました。
この地域の「サイクル」を再び健全に動かすため、「汚れ(汚濁負荷・ゴミ等)」を減少させ、水質を改善することを目標といたします。
具体的には、沼周辺だけではなく流入河川の上流まで含めた地域の中で、生活においても、事業においても、全ての者が沼への汚濁負荷の低減に取り組み、蓄積された「汚れ」を取り除くとともに、沼の自然浄化能力を回復させ、アオコ等の発生を抑えて、かつて見られていた水生動物や水草がより多く回復することを目指します。
目標2:生態系の保全-多くの人の手を借りて自然を再構築する-
植物、動物、魚介類など戦後失われたものが多いことは周知のとおりとなっております。この土地特有の生態系のうち、残されている部分を保全し、失われた要素・空間は再度復元・創造することを目標といたします。
生態系の保全を行うには、まず現況を理解する実態調査が必要です。また、時により、場所により、同じ働きかけに対して異なる反応を見せる自然を相手に、試行錯誤を繰り返しながら、モニタリングを実施し、結果を詳細に記録し、気長に、かつ、あきらめずに見守ることが重要になってきます。そのためには近隣の人や団体、学校等の協力を仰がなければ実現は難しいものがあります。
水域の環境(流水と止水、水際・湿地・干潟及び水底)と、陸域の環境(水田・畑・草地・樹林及び水際・湿地・干潟)が、互いに接し、入り組んで存在することで形成される豊かな生態系が保全・復元され、それぞれの環境に多様な生物が生息する場所となることを目指します。また、多方面の人たちの協力を仰ぎながら、一つずつ可能なことから始め、地道に活動を継続することを目指します。
目標3:親水性の向上-沼とふれあい、愛着をもって沼と接する-
多々良沼や城沼は過去、農業や漁業等に携わる人々により守られ、生活の様々な場面で人々の生活を支えてきました。また、遊びの場、憩いの場として人々の身近なものでした。高度成長以降、就業構造やライフスタイルの変化、自然環境の悪化、価値観の変化などにより、沼と人の生活の関わりは薄くなり、沼と係わる人の数は減少していきました。
沼の自然環境を再生していくためには、散策や釣り、自然観察などで沼を訪れる人々だけでなく、さらに多くの人がそれぞれの関心から発して「沼への愛着」を持ち、日常的に沼と関わる機会を増やすこと、すなわち、沼の親水性を高めることを目標とします。
具体的には、沼が持つ既存の価値を磨くとともに広く情報発信し、世代などの偏りもなく、より多くの人々が様々な形で自然を楽しみ、歴史や風景や伝統的な文化に触れる機会を創出することにより、沼に愛着を持つ人々が増えることを目指すこととします。
目標4:地域の協働関係の構築-多様な団体や幅広い市民が協力し合う関係を構築する-
多々良沼と城沼が目指すべき姿について根気強く話し合いを続け、並行して自然環境の保全・再生を目指した活動を続けていくために、多様な主体が、それぞれの役割分担に基づいて、自発的に活動を進めかつ協働する、地域の協働関係を構築することを目標とします。
自然環境保護団体、土地改良区及び漁協など、目的は異なるが、沼に愛着を持ち利用している団体が、多々良沼・城沼の自然再生・保全という大きな目的を共有し、協力し合うこと。
行政や教育機関などの公的な機関はその活動を支え、継続していく環境を整えること。
地域住民は自らの生活の中で水質改善等の活動に取り組むとともに、近隣住民や関心分野を等しくする市民・団体等と協働して、多々良沼・城沼の自然再生・保全の活動に参画すること。
このように、住民・団体・行政・教育機関がそれぞれの役割分担のもと、継続して協働していくことを目指します。