実施計画について

多々良沼・城沼自然再生事業 事業管理実施計画

はじめに

多々良沼・城沼自然再生協議会では、平成23年5月に「多々良沼・城沼自然再生事業全体構想」を策定し、自然再生の基本方針や目標などを定めました。

今後は、全体構想を踏まえ、対象エリア及びその周辺において、自然再生や保全に取り組む人たちが、それぞれの「自然再生事業実施計画」を作成し、様々な取り組みを進めて行くことになります。

一方、本協議会の役割は、それぞれの目的をもった様々な取り組みが協調し、相乗効果が上げられるように、個々の「自然再生事業実施計画」の案についての協議や実施に係る連絡調整などの事務を行い、自然再生と共にその活動の活性化を促進することです。

そこで、本協議会の活動計画として「事業管理実施計画」を作成しました。

本書は、全体構想において掲げた自然再生の4つの目標である「水質の改善」、「生態系の保全・回復」、「親水性の向上」、「地域の協働関係の構築」に関して、様々な取り組みが進められたことによる達成状況を統一的かつ総合的に検証するためのモニタリング方法や評価方法を示しました。

また、全体構想の実現に向けた自然再生事業の継続や拡大を図るために、優れた取り組みに対する表彰や活動資金助成など、本協議会が実施する事業を示しています。

協議会の様子(H22.10.9)

目 次

第1章 実施者の名称及び実施者の属する協議会

本実施計画は、多々良沼・城沼自然再生協議会が、第4章に記載した自然再生事業を全体構想に基づき円滑に実施するために取りまとめたものである。
実施者の属する協議会は、多々良沼・城沼自然再生協議会である。

第2章 自然再生事業の対象となる区域及び対象区域の概要

2-1 対象区域

自然再生の対象区域は、次図に示す多々良沼周辺約150ha、城沼周辺約100ha であるが、水質改善のための取り組みについては、流入する河川流域全体とする。
(なお、多々良沼及び城沼は、それぞれ多々良川の一部、鶴生田川の一部であるが、本計画においては川と沼を分けて記述する。)

多々良沼の自然再生対象区域(水域含む)


多々良沼の自然再生対象区域(水域含む)

城沼の自然再生対象区域(水域含む)


(出典:多々良沼城沼自然再生事業全体構想)

多々良沼の流入・流出流域と城沼の流入流域


(出典:多々良沼城沼自然再生事業全体構想を一部修正)

2-2 対象区域の概要

(1) 区域の歴史及び社会環境の概要

多々良沼と城沼が位置する邑楽館林地域は群馬県の南東部にあり、渡良瀬川と利根川に挟まれ、各所に平地林と沼・湿地が残っている。
沼や湿地は、関東ローム層からなる低い台地を小河川が浸食することによってつくられた泥質堆積物が積もった谷底にある。台地上部との標高差は3m程度である。
谷底の湿地が徐々に水田化される中で、多々良沼は主に農業用水の供給源として、城沼は主に館林城を守る自然の要害として、沼の状態が維持されてきた。
多々良沼は、群馬県館林市と邑楽町にまたがる沼で、面積は約80ha、周囲は約7km ある。最寄駅は、東武伊勢崎線館林駅、多々良駅と、小泉線成島駅である。
城沼は、館林市の館林城址の南東に位置し、東西約3.8km、南北0.2km の東西に細長い沼である。面積は約50ha、周囲は約8km と大きく、外周園路は多数の市民の散策や運動に活用されている。最寄駅は東武伊勢崎線館林駅で、東北自動車道館林インターチェンジにも近い。

(2) 区域の自然環境の概要
  1. 多々良沼
    多々良沼に流入する河川には多々良川と孫兵衛川がある。沼を経た水は、水田のかんがい期に一部が逆川に流れ出るほか、多々良川として矢場川に合流し、渡良瀬川へと流れている。
    かつて、渡良瀬川の洪水時には河川水が多々良沼周辺にも逆流し、大規模な洪水が発生していたが、江戸時代以前に設置された洪水防止の堰(現木戸堰付近)や木戸堰の改修整備(昭和43 年(1968 年))により、渡良瀬川からの逆流は発生しなくなった。
    一方、木戸堰の設置に伴い多々良沼の農業用水源としての機能が強化され、水田のかんがい期は非かんがい期に比べ沼の水位が約2m高くなるなど、多々良沼特有の水辺環境が確立されてきた。
    また、冬季にはハクチョウをはじめとする多くの水鳥の飛来地となるほか、釣りや風景写真の撮影、ウォーキングに訪れる人も多く、近接する多々良沼保安林、群馬県立館林美術館と併せて、観光やレクリエーションの拠点となっている。
  2. 城沼
    城沼への主な流入は鶴生田川と加法師川であり、沼から流出する鶴生田川は、谷田川と合流し、渡良瀬遊水地を経て利根川に流れる。
    城沼の水深は、昭和38 年(1963 年)頃までは最大水深1.4m程度で大半が1m未満の、水深の浅い沼であった。
    しかし、館林市の市街地の排水が、鶴生田川等を経由して城沼に集中し、周辺地域の洪水被害が相次いだため、沼の浚渫により洪水調節容量を確保する工事と、上流部の鶴生田川放水路により上流からの洪水を近藤川に分派する工事が実施された。また、水質の富栄養化を緩和するため、平成6年(1994 年)から、鶴生田川を通じて、多々良沼の水を城沼に導水している。
    現在の城沼は、周辺には、館林城の土塁の遺構、江戸時代からの古木が残るつつじが岡公園、尾曳神社、善導寺(榊原康政墓所)、善長寺などの名所旧跡が残されているほか、城沼総合運動公園が隣接して整備されている。また、冬にはハクチョウなどの水鳥の飛来地、春にはツツジの名所、夏にはハス花まつりが行われて、四季を通じた観光・レクリエーションの拠点となっている。

2-3 対象区域の現状と課題

(1) 環境変化の概要

多々良沼及び城沼は、戦後の高度経済成長と人口の増加を受けて、それぞれ多々良沼は主に邑楽町、城沼は館林市の市街地の生活排農業排水が流れ込み、富栄養化が進んだ。
また、沼周囲の湿田の乾田化・畑地化、あるいは耕作の停止、ヨシなどの活用の停止といった、経済活動・生活様式の変化も要因と済活動・生活様式の変化も要因と生育環境としている在来の動物種が少なくなりつつある。


環境変化の概要 イメージ図
(2) 水環境等の現状
  1. 水質
    城沼下流の鶴生田川岩田橋地点のBOD(生物学的酸素要求量)は、毎年「生活環境の保全に関する環境基準 河川C 類型」を超過しており、県内河川で最も富栄養化した状況が続いている。
    また、多々良沼と城沼のBODは、流域住民の生活排水対策実施の努力により、城沼の水質は改善傾向にあるものの、館林市内の他の沼(蛇沼、近藤沼、茂林寺沼)と比べて常に数値が高く、「汚れている」状況が続いている。
  2. 魚類※1
    平成16 年(2004 年)に多々良沼、17 年(2005 年)に城沼において、定置網を使って調査したところ、いずれの沼でも、水質の悪化に耐えられるモツゴが捕獲個体数の大半を占めていた。在来種のタナゴ類については確認ができず、特定外来種のオオクチバスの個体数比率が高かった。
    魚類の確認種数は、多々良沼が30 種に対して、城沼では25 種であったことから、多々良沼は渡良瀬川との交流があると考えられるが、城沼は、流出口の首洗堰や谷田川の堰により下流河川との交流が限られていると考えられる。
  3. 鳥類
    鳥類については、日本野鳥の会群馬県館林分会等により熱心な調査活動が行われており、多々良沼では平成14 年(2002 年)~19 年(2007 年)の間で113 種、城沼では平成15 年(2003 年)~19 年(2007 年)の間で60 種が確認された。
    多々良沼はハクチョウの越冬地として知られているが、城沼でも平成12 年(2000 年)頃からハクチョウの飛来が確認され、カモ類などの水鳥も数多く確認されている。
    また、春・秋の渡りの時期には、多々良沼の水位の低下によって現れた干潟にシギ・チドリ類が飛来する。
  4. 植物
    植物については、特に多々良沼において、数多くの水生植物が残存し、古くから全国的に注目されてきた沼であり、昭和3年(1928 年)には、牧野富太郎博士指導の東京植物同好会が訪れて、ムジナモや多数の湿地性植物が記録された。
    その後、平成6年(1994 年)に行われた調査では、ボランティアセンターの南西ヨシ群落内で沈水植物のイヌタヌキモが確認されたほか、タタラカンガレイなどの湿地性植物が確認され、平成19 年(2007 年)の調査では、コキクモや、ミズオオバコ・アズマツメクサなどの貴重な水生植物が確認された。
    このことから、多々良沼においては、水質の富栄養化などのマイナス要因はあるものの、引き続き水辺環境を改善又は維持していくことにより、乾田化されずに残っている区域や浅水域の底泥中の埋土種子を起源とする「かつて存在していた水生植物」を再生できる可能性は高いと考えられる。
    一方で、平成19 年(2007 年)の調査では、多々良沼周辺でアレチウリなどの特定外来生物が確認されており、継続的な監視と適切な駆除を継続する必要がある。

    一方城沼では、洪水対策として行われた浚渫工事により、なだらかだった水際部や沼内の浅い部分が掘削され、こうした場所に生育していたヨシ・ガマ群落が一時的に失われたが、その後、一部親水護岸整備により埋め戻され、傾斜のある水際にヨシ群落が再生した。
    また、沼内にはハス群落が広がっている。
    城沼の南東に位置する古城沼は、江戸時代初期頃に仕切土手により城沼と分断され、城沼の水が入らない水田と湿地の状態となり、湿地部分は、カサスゲ・マコモ・ヒメガマ・ヨシ等の堆積による陸化が進み、一部は泥炭層が浮島になっていた。そこには、ヒメミクリ・サワギキョウ・ニッポンイヌノヒゲ・カキツバタ・イトハコベなど稀少な植物が生育していた。その後、平成3年(1991 年)頃から浚渫工事が行われ、当時のヤナギ林・ハンノキ林は鋼矢板で外周を保全した上で植物生物保全ゾーンとして残され、湿地部分は掘削された。現在、古城沼の掘削部分は開放水面となり、ハスの群落が広がっている。

    ※1:以下、動植物の現況については、主として「館林市史 特別編 第3巻 館林の自然と生きもの」(平成20年(2008 年)、館林市)の記述に基づく。
  5. 水質・動植物・親水性の課題の関連
    多々良沼と城沼の現状の課題は、図に示すようにつながりあっており、自然再生を実現するためには、それぞれの課題の解決に関係する、幅広い参加者による多様な活動の実施が不可欠と考えられる。

多々良沼・城沼の水質・動植物・親水性の課題の関連図

第3章 本実施計画の自然環境保全上の意義及び効果

本事業の対象区域は、多々良沼及び城沼とその隣接する地域で、それぞれの沼の周囲に都市公園等が整備されており、民地と公有地が混在する地域である。
本区域内では、郷愁を感じさせる風景を維持し、東毛地域独特の自然や清らかな水質を取り戻すために、既に、多様な人々がそれぞれの目的をもって、環境美化、水質改善、及び自然環境の保全・愛護活動などに取り組んでいる。
しかしながら、現時点ではこれら活動が協調し相乗効果を上げるように実施されているとは言えない状況であり、団体によっては会員の高齢化が進むなど、活動の継続と更なる発展に向けた連携や積極的な広報、活動参加者の増加を図ることが急務となっている。
そこで、本協議会は、

  1. 既存の活動に関する情報をそれぞれの関係者間で共有し理解すること
  2. それぞれの活動をより一層促進するための手法や助成などを提供すること
  3. 地域の将来像を実現するために新たな活動や参加者を誘導する体制を作ること

を実施することにより、自然再生を図ると共に地域全体の活動の活性化につなげるものである。

第4章 実施計画の内容

4-1 目標達成のための指標の設定とモニタリング及び評価

(1) 水質の改善
  1. 指標
    多々良沼・城沼自然再生事業全体構想では、沼周辺だけでなく流入河川の上流地域の全ての者が、沼への汚濁負荷の低減に取り組み、蓄積された「汚れ」を取り除くとともに、沼の自然浄化能力を回復させることを目指している。
    そこで、多々良沼・城沼を含む水系の水質改善状況を総合的に把握するため、各沼中央部の表層における水質(BOD及びCOD)を水質改善の指標とする。
  2. 目標値
    多々良沼・城沼それぞれの中央部の表層におけるBOD 及びCOD が環境基準を下回ることを目標とする。なお、多々良沼(多々良川)には環境基準が設定されていないが、水系全体の水質改善を目指すため、城沼(鶴生田川)と同じ基準の達成を目標に設定する。
項目 算出方法 環境基準 水域類型 類型選択の根拠
BOD 75%値 5mg/I以下 河川C 鶴生川の類型指定
COD 75%値 5mg/I以下 湖沼B 鶴生田川の類型指定における水位域用途と同等の湖沼累計を採用
  1. 評価方法
    2の表に示した環境基準値の達成状況を項目ごとに評価する。
  2. モニタリング方法
    自然再生協議会は、館林土木事務所及び館林市が実施している、次2点における公共用水域水質調査結果を収集することにより水質改善状況を把握し、各取り組みへフィードバックする。

水質のモニタリング地点

多々良沼 城沼
評価地点 多々良沼中央部(表層) 城沼中央部(表層)
調査実施主体 館林土木事務所 館林市
調査地点名称 沼(1)(表層) 城沼中央部(表層)
年間調査回数 4回/年 6回/年
(2) 生態系の保全・回復
  1. 指標
    多々良沼・城沼自然再生事業全体構想では、水域の環境と陸域の環境が、互いに接し、入り組んで存在することで形成される豊かな生態系が保全・復元され、それぞれの環境に多様な生物が生息する場所となることを目指している。
    しかし、水質の悪化や、地域経済、ライフスタイルの変化を受けて、それまでは東毛地域の沼・湿地・湿田や平地林内で普通に見られていた在来種が確認しづらくなっている。
    一方で、平成17 年(2005 年)に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行されるなど、地域の生態系に悪影響を与える動植物種に対する認識は高まりつつあり、それらの生息・生育状況を把握し適切に管理・駆除することが、在来の動植物種とそれらを含む生態系の保全・再生に大きく貢献する。

    そこで、自然再生事業の対象区域において確認される、在来の動植物種の個体数(分布範囲)・種数の増加、及び、特定外来生物等地域の生態系に悪影響を与える動植物種の個体数(分布範囲)・種数の減少を、生態系の保全・回復の指標とする。
  2. 目標像
    自然再生事業の対象区域に入り組んで存在する、水域、湿地(湿性草地)、陸上の草地、及び水辺と陸上の樹林地において、以下の2点を、生態系の保全・回復の目標像とする。
    1. 「特に保全・回復・再生を目指す在来の動植物種」が、平成25 年(2013 年)時点よりも増加すること。
    2. 特定外来生物等「地域の生態系に悪影響を与える動植物種」が平成25 年(2013 年)時点よりも減少すること。
  3. 評価方法
    以下の2点について、平成25 年度以降に現況調査を実施して基準年の値・状況を明らかにし、以後の調査結果を基準年の状況と比較して、評価を行う。
    1. 在来の動植物種の個体数(分布範囲)・種数の維持、あるいは増加。
    2. 特定外来生物等「地域の生態系に悪影響を与える動植物種」の個体数(分布範囲)・種数の減少。
  4. モニタリング方法
    自然再生協議会は、館林土木事務所及び館林市が実施している、次2点における公共用水域水質調査結果を収集することにより水質改善状況を把握し、各取り組みへフィードバックする。

生態系の保全・回復のモニタリング調査概要

鳥類 ・対象区域で確認できる陸鳥・水鳥の種及び種数を調査する(ヒヨドリ等の大きな群れが確認された場合個体数が大きく増加し、他の調査時との比較が難しくなることから、個体数はモニタリング対象としない)
魚類 ・多々良沼・城沼で捕獲される魚類に占める在来種・外来種の個体数・種数を調査する
植物 ・「特に保全・回復を目指す植物種」の個体数(分布範囲)・種数を調査する
(湿地等、立ち入りが危険な場所に生育する植物種も確認する必要があるため、原則として外部の調査機関への委託により調査を行う。)
a. 鳥類
  1. 調査個所
    自然再生事業の対象区域及び周辺とする。
  2. 調査方法、頻度・期間
    現地調査の方法等は、原則として(公益財団法人)日本野鳥の会群馬県館林分会の方法等を基本とするが、調査を実施する各団体の任意とする。
    調査結果の取りまとめは、原則として調査を実施する各団体が現地調査日ごとに行い、短い報文とともに自然再生協議会事務局に提出する。

    自然再生協議会は、
    a. 現地調査日程をあらかじめ調査実施団体から入手し、協議会ホームページ等を活用して広報する。
    b. 現地調査実施後、調査実施団体から調査結果を入手する。
  3. 調査結果の取りまとめ
    自然再生協議会は、収集した調査結果をもとに、対象区域で確認できた陸鳥・水鳥の種・種数を記録し、前年、及び過年度と比較し評価を行う。
b. 魚類及びその他の水生動物
  1. 調査個所
    • 多々良沼:定点1~2カ所
    • 城沼:定点1~2カ所
  2. 調査方法
    • 本調査に先立ち、前に、複数の漁具(定置網、すくい網、投網等)で捕獲を試行し、最も多くの個体又は種類を捕獲できる漁具を選定する。
    • 捕獲した個体は、現場で、種の同定、種別の個体数の計数を行う。(外来種以外は原則リリース)
    • 外来種は、調査後、リリース、あるいは殺処分し、生体の移動は行わない。
    • 貝類については、ジョレンなどにより採取する。
  3. 頻度・期間
    • 年1回の調査を概ね5年毎に実施する。
多々良沼 調査時期:9月末〜10月 多々良沼は、5月頃堰上げされた沼の水が、9月末に水位が減少することにより、魚類の活動が活発になり、多種類の魚類の確保が可能と見込まれることから。
城沼 調査時期:9月末〜10月 多々良沼と同時期の実施が好ましいことから。
  1. 調査結果の取りまとめ
    自然再生協議会は、多々良沼・城沼それぞれについて、以下の数値を算出し、過年度と比較し評価を行う。
    1. 在来種の種数
    2. 外来種の種数
    3. 全捕獲個体数に占める在来種、外来種の比率

*「その他の水生動物」とは
淡水貝類・・・ヒメタニシ、マルタニシなどの巻き貝・ドブガイ、マシジミなどの二枚貝
エビ類・・・・テナガエビ、スジエビ、アメリカザリガニなど
カニ類・・・・モクズガニなど

c.植物
  1. 調査個所
    自然再生事業の対象区域及び周辺。
  2. 調査方法
    1. 調査対象種の選定
      自然再生協議会は、生態系部会(専門委員)の協力を得て、調査対象(駆除対象)とする「特に保全・回復を目指す植物種(以下、保全対象種)」及び「地域の生態系に悪影響を与える植物種(以下、駆除対象種)」を選定する。
    2. 保全対象種調査の実施
      • 調査方法
        • 自然再生協議会は、多々良沼及び城沼の水域及び周辺の陸域を対象として、植物相調査を実施する。
        • 調査に当たっては、調査対象とする区域の植物相に関する知見が豊富な専門家の協力を得る。(調査時期及び重点的な調査個所等に関するアドバイスの提供、現地調査への同行指導、及び調査結果の検査等)
        • また、調査の精度・効率に影響が出ない範囲で、市民等の調査への参加を図る。
      • 調査範囲
        • 多々良沼周辺を重点とし、水域、湿地部、草地部(畑地・公園予定地等)、樹林部を網羅する。なお、「湿地部」はヤナギ高木林、ハンノキ林、ヤナギ低木林、及び湿性草地(ヨシ群落、マコモ群落、ヒメガマ群落、オギ群落、水田雑草群落(休耕地含む))を指す。
        • 城沼の調査を行う際には、平成2年(1990 年)に古城沼の改修を行った際に湿地性植物を移植した南東部樹林内(自然保護地)を重点とし、他の必要な部分も含める。
        • なお、植物相調査の実施中に確認された駆除対象種は、種、位置、分布範囲を図・表に記録・整理し、市民の協力による駆除対象種調査の実施に活用する。

          【多々良沼周辺】


          参考:平成19年(2007年)に多々良沼お世に周辺で確認された希少種等(絶滅危惧種など)の確認位置図

          【城沼周辺】

          ハスの繁茂状況

          出典:「館林の植物」館林市(平成7年(1995 年))

          【参考】平成2年(1990 年)の古城沼浚渫及び自然保護地整備の計画図
      • 頻度・期間
        生育している在来種を確認するために、次表を参考にして、年4回の調査をおおむね5年毎に実施する。
        保全対象種の保全活動が開始された場所では、保全による効果を確認するため、毎年適期に調査を実施して、個体数(分布範囲)を把握する。
    3. 市民の協力による駆除対象種調査の実施
      • 調査方法
        • 自然再生協議会は、自然再生事業の対象区域及び周辺で清掃・草刈活動を実施している団体に対し、年2回の調査時期に該当する活動に先立ち、清掃・草刈と同時、あるいは先立って、駆除対象種調査を実施するよう、協力を要請する。
        • また、自然再生協議会は、分布状況の記録用紙を作成する。
        • 自然再生協議会生態系部会(専門委員)は、各活動団体とともに、各団体の活動範囲における駆除対象種の分布状況を現地において調査し、出現した駆除対象種の同定について解説するほか、出現しなかった対象種の見分け方についても、概要を解説するまた、分布状況の記録方法の普及を図る。
        • 自然再生協議会は、各活動団体から、各回の調査実施後に分布状況の記録用紙の提出を受け、分布を拡大しつつある駆除対象種の種類及び分布範囲を把握し、生態系部会(専門委員)と、駆除の必要性について協議する。
      • 頻度・期間
        駆除対象種の駆除活動が開始されるまでの期間は、年2回の調査を5年おき毎を目安に実施する。
        駆除対象種の駆除活動が開始された場所では、駆除による効果を確認するため、調査を毎年実施する。

        駆除対象種のモニタリング調査案
  3. 調査結果の取りまとめ
    自然再生協議会は、収集した調査結果をもとに、種、位置、分布範囲を図・表に記録・整理し、前年、及び過年度と比較し評価を行う。
(3) 親水性の向上
  1. 指標
    多々良沼・城沼自然再生事業全体構想では、沼が持つ既存の価値を磨くとともに、より多くの人々が様々な形で自然を楽しみ、歴史・風景・伝統的な文化に触れる機会を創出し、沼に愛着を持つ人々が増えることを目指している。
    そこで、自然再生事業対象区域において行われる以下の活動の、単年度の延べ参加者数合計を親水性の向上の指標とする。
    1. 園等の施設利用者数
    2. スポーツ、レクリエーション、まつり等のイベント等の開催及び参加者数
    3. 清掃・美化活動の開催及び参加者数
    4. 自然環境・自然再生・水質改善に関わる講座・体験教室・課外授業等の開催及び参加者数
  2. 目標値
    平成25 年度以降に現況調査を実施して基準値を設定し、基準値からの増加を目指す。
  3. 評価方法
    整理した結果を基準年と比較して、評価を行う。
  4. モニタリング方法
    自然再生協議会は、自然再生事業対象区域において行われる対象活動の情報を収集し積極的にPR するとともに、参加者数等の計測・記録・アンケート調査等を実施者に依頼する。
    活動終了後、自然再生協議会は、参加者数情報を収集し、累計・整理する。
(4) 地域の協働関係の構築
  • 指標
    多々良沼・城沼自然再生事業全体構想では、多様な主体が、それぞれの役割分担に基づいて、自発的に活動を進めかつ協働する、地域の協働関係を構築することを目指している。
    そこで、自然再生事業全体構想に位置付けられる活動を実施する団体を中心として、自然再生実施計画を策定して行う活動数及び関係団体間の協議の開催数などを、地域の協働関係の構築の指標とする。
  • 目標値
    複数の団体が共同で実施計画を策定して活動するケースや、協議会を通じて実施計画を策定して活動するケースなど、自然再生協議会に参加する団体及び関係する複数の団体が連携して実施する活動数が基準年より増加すること。(平成24 年度末時点で31 団体(地方公共団体、町内会、民間企業、市民団体を含む))
  • 評価方法
    協議会参加団体等が協働して行う活動数及び協議の回数を基準年と比較して、評価を行う。
  • モニタリング方法
    毎年度末時点の協議会参加団体等が協働して行う活動及び協議の回数を計数する。

4-2 協議会の取り組み

(1) 表彰・顕彰の実施

自然再生事業全体構想における目標及び指標の達成に大きく貢献した取り組み、及び自然再生事業に関するPRに貢献した取り組みを実施した団体などに対し、自然再生協議会が表彰・顕彰を行う。

(2) 活動資金の助成

自然再生事業全体構想における目標達成に向けた取り組みとして、新しい分野・方法・参加者層をターゲットとした事業・活動にチャレンジする者やその活動の拡大を図ろうとする者などが行う活動に対して、自然再生協議会が活動資金の助成を行う。

(3) 普及啓発事業の実施

自然再生協議会は、自然再生に必要な情報について、協議会参加公共団体、市民団体等の広報・会報を活用した情報発信や、マスメディアへの情報提供をするとともに、協議会及び協議会委員・母団体が持つ人脈ネットワークを活用し、群馬県・館林市・邑楽町等が実施する市民向け講習会への講師派遣など、多様な普及啓発事業を実施する。

(4) 年次報告書の発行

自然再生協議会は、4-1に示した各項目のモニタリング結果や多数の団体が進めるそれぞれの活動の報告を毎年度収集し、「年次報告書」として公開する。
また、自然再生協議会は、活動報告書の作成に向けた情報収集や編集作業、公開後の報告会の開催等を通じて、①目標・指標の共有・普及、②協議会・部会におけるコミュニケーションの継続・促進、③目標・指標の達成状況の確認及び共有・普及を図る。

(5) 地域の経済活動との連携

自然再生協議会は、ヨシ刈り・ヨシ焼き、イケチョウガイによる淡水真珠養殖、ハス根茎除去(レンコン掘り)などの既存の活動のイベント化、首都圏からのバスツアー等の集客等、自然再生事業と地域の経済活動との連携を積極的に推進する。

第5章 その他自然再生事業の実施に関し必要な事項

5-1 情報の公開と市民参加

本計画の実施に当たっては情報の公開と説明を十分に行い、透明性を保つ。
また、関係組織・団体、及び地域住民をはじめとする様々な人々の意見を取り入れ、必要に応じて計画を見直し、合意を得ながら事業を進める。

5-2 他の取り組みとの連携

ふたつの沼に関わりを持つ多様な立場の団体・個人が一堂に会してから、部会の開催がまだ10 回に満たない段階にある。今後は、他の事業実施者や専門家及び近隣住民との間で頻繁に意見交換が行われ、地域における人脈ネットワークが強化されるよう、自然再生協議会が実施する事業を通じて、多様な自然再生事業の事業主体の管理、及び自然再生事業全体の円滑な運営の実現を目指す。
自然再生協議会が、地域や事業実施者の意見を十分把握し、これらの人々に対する様々な働きかけを効果的に進めていくために、地域において協議会委員及びその母団体が持つ影響力を最大限に活用する。

5-3 計画の見直し

本計画は、自然再生協議会が必要に応じて見直しを行う。
特に、自然環境の保全・再生は、事業効果が気象条件等の影響を受ける場合が多いことから、5年間程度の事業とモニタリングを実施した結果、目標に近づいている効果が確認できない場合には、自然再生指標の設定及び自然再生モニタリング調査の実施内容について見直す、順応的な計画の管理を行う。
また、地域の社会環境、経済環境の変化に応じて、自然再生活動の支援及び普及啓発事業の実施内容に関する見直しを行う。
見直しの過程では、情報の公開と市民参加を適切に実施する。
改訂された実施計画は公開する。

参考資料1